PTSDとPE

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「つらいことを話すと楽になる」

私たちは嫌な体験をした時にどうするでしょうか。多くの人は、できることなら、家族や友人などにそのことを話して、気持ちを受け止めてもらいたいと思います。そうすることで感情が楽になり、ポジティブな考え方ができるようになります。そのような人が見つからなくても、自分の中で対話をしながら、同じように楽になっていく場合もあります。

「トラウマのことは話せない」

しかし非常に深刻なトラウマ体験をした場合には、話す相手が見つからないことがあります。特にPTSDになると、思い出したくないトラウマが、恐怖とともにフラッシュバックのように思い出されてしまいます。嫌な考えがわいてきたり、気持ちがぼんやりとしてしまいます。そのために、自分で回復をすることは難しくなります。フラッシュバックで思い出しても、回復にはつながりません。自分にはどうしようもないという絶望が深まるばかりです。

「受け止めて一緒に回復する」

このような方に対して、トラウマの体験を受け止め、気持ちを楽にし、ポジティブな考えができるように作られたのが、持続エクスポージャー療法(PE)です。フラッシュバックや、自分を追いつめるようなネガティブな考えをコントロールしながら、話しをしていきます。誰にも話せなかった体験を受け止めることで、安心と自信が生まれます。治療者と一緒にトラウマに戻って、そこから一緒に回復の道を歩む治療だといってもよいでしょう。

「本当につらいことは?」

持続エクスポージャー療法(PE)は、患者につらいトラウマを思い出させる治療だという人がいます。しかし患者は毎日のようにトラウマを思い出しています(フラッシュバックなど)。一番つらいのは、自分の苦しみを誰にも話せないこと、一人で苦しみを抱えていることです。持続エクスポージャー療法で自分の苦しみを受け止めてもらえることは、回復に向けての大きな一歩になります。

それから、どのようなPTSD治療であっても、患者は必ずトラウマのことを思い出しています。その苦しみに治療者とともに向かい合い、安心と回復をもたらすことがこの治療です。

「とても大切なこと」

病気で薬を飲む時に、効果が証明されていない薬を飲む人はいないと思います。PTSDの治療のうち、持続エクスポージャー療法(PE)はもっともよく効果が証明されており、米国学術会議の報告書で、PTSDについて唯一、十分な研究がなされている治療法だと認められています。また日本でも薬と同じ厳しい基準で効果研究がなされています。さらにこの治療の実施のためには、24時間の研修に出席し、指導(スーパーバイズ)を受け、米国から認定書をもらうというシステムになっています。

このような研修を受けていない方が、ただ本を読んだだけで自己流の持続エクスポージャー療法(PE)を行うことはできません。教科書を読んだだけでいきなり手術をするようなものです。

「どうやったら受けられるの」

残念ながら持続エクスポージャー療法(PE)ができる治療者の数はまだ多くありません。まずは信頼のできる医師やカウンセラーなどに良く話しを聞いてもらって下さい。お薬で楽になることもあります。それでも良くならない場合は、精神科の主治医を通じて当会までメールで問い合わせをしてもらってください。ただしお住まいの地域に治療者がおられないこともあります。またこの治療は医療保険での支払いが認められていませんので、施設によっては私費になることもあります。

「もっと詳しく知りたい」

さらに詳しく知りたい方には、患者用のワークブックとして、次のものがあります。ただしこれは治療の中での副読本ですので、これを読んで一人で治療をすることはできません。

・PTSDの持続エクスポージャー療法ワークブック トラウマ体験からあなたの人生を取り戻すために (星和書店)
・青年期PTSDの持続エクスポージャー療法 -10代のためのワークブック (星和書店)

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